長男のワークパンツ

「母ちゃん、あのお手紙を書くかわいいやつ出して」
子供向けのイラストがデザインされた便箋と封筒のことだろう、食後のひととき、次男が突然言い出した。
「かおり先生にお手紙書くの。だから出して?」
どこで覚えたのか、小首をかしげて語尾を上げて頼んでくる。なんとも言えない可愛らしさが漂う。しかし次男はまだ字を書けない。ここでお兄ちゃんの出番となる。
「正宗、清貴が先生にお手紙書きたいって言ってるから、代わりに書いてあげて」
頼むと、椅子に座ってテレビを見ていた長男は「うん。いいよ。書いてやるよ。」と気のいい返事をする。
「じゃあ、お願いね」
あとは二人に任せて、私は食後の片付けに取り掛かる。

「なんて書くの?」
「えっとねぇ、いつもー、折り紙をー、教えてくれてー、ありがとう」
「あとは?」
「えっとぉ。いつもー、お外でー、遊んでくれてー、・・・」
というようなやり取りに楽しく耳を傾けた。

片付けも一段落したので、どんな感じだろうと手紙を覗いてみた。開口一番、
「字が汚い。これじゃ先生でも読めん」

私の個人的な好みだが、字のきれいな男性はそれだけで2割増くらい素敵にみえる。普段は大声で騒いでふざけているくせに、字を書かせると美しい。そんなギャップもまたよい。さて、災難なのは長男である。次男の代筆を快く引き受けただけなのに、字が汚いからという理由で書き直しを命じられた。

彼の字を観察すると、形はあっている。そして、書いている姿を観察すると、上手に書きたいという気持ちはある。
「あ、変になっちゃった」
「(「よ」を書きながら)あ、丸いところがなくなっちゃった」
などとブツブツ言っている。思うに、きれいに書こうと思うあまりに、筆圧が強くなっている。また、罫線内に字を収めようとするあまり、縮こまった字になっている。そして姿勢が悪い。膝立ちで肘を机につき、顔は机すれすれまでに近づいている。
「まず、ちゃんと正座して座りな。左手は紙にそっと添えて。字を書く場所はこんなにあるんだから、もっと一つ一つの字を大きく、のびのび書いていいんだよ」
教えながら、お手本も書いてやった。
長男は、うんうん、と真面目な顔をして聞いている。そして、言われたとおりに書いた字は、先ほどとは打って変わって読みやすく、なによりのびのびと書かれていて気持ちがいい。本人も「なんか字が上手になった気がする」と嬉しそうである。

かくして、お手紙は無事に封筒に収まったのだが、お兄ちゃんが字の練習をしている間、次男は何をしていたかというと、
「にいちゃん、もっとのびのび書いたらいいんじゃなあい?」
「にいちゃん、もっとゆっくり書いてもいいんじゃなあい?」
などと、蝶のようにまわりをフワフワと歩きながら、私の言葉を真似て遊んでいただけである。お前の手紙を書いているんだぞと一瞬イラッとしないでもないが、可愛らしさにかき消されてしまった。これも次男の特権というものであろうか。

相変わらず前置きが長いですが、このようなさまざまな災難がふりかかる度にそれを乗り越える(大げさ)、戦う小学2年生の長男に、ワークパンツを作りました。

ポケットにちょっとだけ手をかけてワークパンツ風に。

がっしり体型で活発な長男、イマドキなスリムパンツがあまり好きではないようなので、彼にはゆったりしたデザインのものをよく作ります。子供の服を作る場合は、数年しか着れないので、簡単でシンプルなパターンがいいと思います。でもシンプルなだけではつまらないので、ポケットで遊ぶのが気楽でいいです。たくさん着てぼろぼろにしてもらえたら、作った者としては嬉しいです。

今回のポケットは、ワークパンツっぽくするために、「ボックス・プリーツ・ポケット」というデザインのものにして、フラップ(ふた)をつけた。

今回のポケットは「ボックス・プリーツ・ポケット」というものです。折り目が裏面で付き合わせになって、箱のようなプリーツが入ったポケットです。既製品でもよく見かけます。さらにワークパンツっぽくするため、フラップと呼ばれるふたもつけています。さて、ここでも余り布が活躍しています。先日つくって好評だった「ストライプのワイドなパンツ」で余ったやつを、ポケットのフラップに使ってみました。フラップになってもなお醸し出される爽やさ、かわゆいです。

なにかポーズを!というリクエストに応える、気のいい長男。まったく気にしない後ろの次男。
ストレッチの効いた布なので、動きやすそうです。よかったよかった。
おまけ。ふたをめくるとこんな感じです。ちゃんと使えますよー。

投稿者: michi

服を作るのが趣味なので、素敵な布屋さんへ行くと興奮します。

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